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「そんなもの、どうだっていい。彼らは神秘を、お金や地位を得るためのものとしか思っていなかったんだ。彼らの言動はすべからず神秘を冒涜していた。その上、兵器として流用しようなんて」 話ながら、青年は目元をぬぐう。 「ちがうんだ。そんなことのために私は何十年と研究をしていたわけじゃなくて。私はただ、ただ、会いたかっただけで……。こんな世界に呼び出してしまってごめん。ごめんね、アンセム」 涙声で俯く黒髪の青年に銀髪の青年が寄り添う。 「……行こう」 ふたりは燃え上がる森に背を向けた。 木々の間をぬけていく。夜明けの空が木々の合間からのぞく。 「実はなんだけど。ぼくまだこっちの世界に慣れていないから、街を吹き飛ばすだけの火力が出せなくて。だから召喚主であるきみの魔力も使わせてもらった。もしかしたら、きみに反動が出るかもしれない」 「その事後報告怖すぎるんだけど」 赤くなった目元で黒髪の青年がまばたきを繰り返す。 銀髪の青年は拾った小枝を振り回している。 「突然、身体が弾けるかもしれないし、いきなり老化するかもしれないし、逆に老化しなくなるかもしれないし。どうなるかはよくわかんない」 「怖いことしか言ってない。さっきから」 顔をしかめていた黒髪の青年だったが、大きく息をついた。肩から力が抜けていく。 「そのなかでアタリなのは三番目のやつかなぁ」 「いいじゃん。好きなことがいっぱいできるよ。なにがしたい?」 「なんだろう。逆に、何かしてみたいことある?」 森のなかに漂っていた夜は薄らぎ、木々の先が見通せるほど明るくなっていた。緑の葉に朝日が滑り青々と輝きを帯びる。
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