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「だって気になりませんか? 一説では古代魔法って、いまの魔法とは構成が異なっていたと言われているんです。それってつまり、出来ることが違ったってってことで」 店内に溌剌としたリトの声が響く。湧き上がる好奇心を燃料にして語る少女に対し、アンセムは雑誌から顔をあげて聞いていた。 「例えばどう違うの?」 「召喚で例えると、妖精や幻獣とはちがったものを呼び出せたんじゃないかって私は思っていて。……あの、その、友達に言ったらすごく笑われたんですけど……」 「教えてよ」 リトは思い切って言葉に出した。 「もしかしたら、神と呼ばれる存在も召喚できたんじゃないかなって」 意外にもアンセムは笑わなかった。 彼は興味を引かれたようにわずかに目を見開くと、「へぇ」と笑みを浮かべた。 「それって夢がある。ね、ジゼル?」 青年の視線と言葉は店主へと向けられた。 ジゼルは黙り込んでいた。相槌も打たず、なにかを堪えるような苦い表情を浮かべていた。 「神さまに会えたらどうしたい?」 アンセムはリトに尋ねた。 思いもよらない問いかけに驚きながら、少女は素直に言う。 「そこまでは考えていませんでした。不思議なものや神秘と呼ばれるものに、少しだけ近づいてみたいって感じです。なので、神さまに会えてもご挨拶ができればそれだけで」 銀髪の青年は頷いた。 そしてそっと目を細めてリトに笑いかけた。 「じゃあ、その好奇心の先にあるのが破滅だったらどうする?」 「え?」 「きみは立ち止まれる?」 アンセムの笑顔は皮肉のない、自然な笑顔だった。しかしなぜか、氷に触れたようにひやりと感じた。彼からの問いかけも相まって、リトはまばたきを繰り返した。
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