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「そして神は、古代魔法使いたちの都市を消し飛ばした。神秘に触れ過ぎた代償のように。何十万もの命も、何代にも渡って研鑽を重ねて来た研究も、古代魔法の形態も歴史も。すべて消滅した」 はるか昔を振り返るような、そんな口ぶりだった。 まるで当時の空気を知っているような、そんな風に見えた。 「だから現在に残っている古代魔法の資料は、たまたま運よく残った燃えカスなんだよ。大部分はもう存在しない。どこを探しても出てくることはない。永遠にピースが揃うことはない。神秘を呼び寄せた古代魔法に、きみたちが辿り着くことはない」 「……え?」 アンセムの語りに呑まれていたリトは、そう短く呟くのがやっとだった。 「待って。いまの話は……」 前を歩く背中に駆け寄る。 すると、くるりと青年が振り返った。 「っていう物語をいま作ってみた」 口をぽかんと空けて立ち止まったリトを見下ろし、アンセムは声を上げて笑い出した。腹を抱えて笑う青年を見て、してやられたことに気が付いた。顔を真っ赤にして「もう! サイテー!」と叫ぶ。笑い声はさらに大きくなった。 赤い本を抱えた腕にぎゅっと力をこめる。 勢いよく本が開いた。バネ仕掛けのような勢いはリトの腕を弾くほどだった。 「!?」 風もないのにページがパラパラとめくれていく。 本の真ん中あたりでぴたりと止まり、そのページの一文が白く輝いていた。 日常で使う言語とは違う文字の羅列。 それは古代魔法語だった。 黒のインクで書かれたそれはほんのりと白い輝きを放っていた。 視線が、意識が、吸い寄せられていく。頭のなかが文字でいっぱいになっていく。
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