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読めないはずの言葉が流れ込んでくる。
リトは無意識のうちに呟いていた。
「秘匿されし神秘、その姿を白日に」
本から強い光が放たれた。一瞬にして視界が真っ白になる。
気が付くとリトは白い空間に立っていた。
書店の店内ではなく、店主や青年の姿もない。
ただただ白い世界が広がっている。頭上も足元も区別なく同じ色で、下手に動くと平衡感覚がおかしくなりそうだった。物音もなく、空気の動きもない。
「ここはどこ?」
リトは呆然と立ち尽くす。
ふと、少し離れたところになにかが居ることに気付いた。
人の形をしている。
それは真白い光を放っていた。白い空間のなかでもその存在がわかるほど、強い輝きを放っていた。
その頭部には光の輪のようなものが浮いていた。輪から放射状に無数の光の筋が伸びている。それは神々しく、物々しい、聖なる後光であった。
神さま、という言葉が脳裏を過る。
リトは自分の手が震えていることに気が付いた。
――あ、どうしよう。
足元からすさまじい勢いで這い上がって来た悪寒と、恐怖。全身に鳥肌が立つ。
いったい何が怖いのか。具体的な理由はわからない。考える余裕がない。
人型の輝きはリトに背を向けているようだった。
まだ気づかれていない。
――早く逃げなきゃ。
何故が強くそう感じた。すぐに逃げ出したい。気づかれてはいけない。
震える足に力が入らない。這ってでもいいから、気づかれるまえに逃げなければ。恐怖と焦りで頭がパンクしそうだった。
そのとき、人型の輝きが振り返った。
俊敏な動きだった。明らかに、リトの存在に気が付いた動作だった。
――やばいっ。
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