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恐怖が沸騰していく一方で、身体から力が抜けて行く。逃げ出したいのに、逃げられない。 目を合わせてはいけない。混乱する頭のなかで強く自分に言い聞かせた。 白く光り輝くそれのどこに目があるのかはわからない。それでも視線を合わせてはダメだという強烈な警鐘が脳内で鳴り響いている。 だというのに。 目を閉じることが出来ない。 まるで縫い留められたように、光り輝く存在から目が離せない。 瞳を見開いたままリトは涙をこぼしていた。 恐怖と緊張に指の先まで支配されていた。気持ちと反して身体は一切動かない。 畏怖との対面が強いられる。 少女の呼吸が激しく乱れる。涙があふれる瞳が小刻みに揺れ、焦点を失い…… 固いものが割れる音が響いた。 リトの身体が跳ねる。 少女があたりを見回すと、そこは白い空間ではなかった。夕方に向かう陽射しが差し込む本屋の店内だった。 肩で息継ぎを繰り返す。足から力が抜けていき、その場にへたり込んだ。 いままで感じたことのない強い疲労感がのしかかる。身体が痛い。汗で髪が貼りついている。ひどく寒い。びっしょり濡れたシャツが背中にまとわりついていた。 駆け寄って来たジゼルがリトの背中を支える。 「……い、いまのは……?」 「魔法に関する本のなかには魔力を含んでいるものがある。それに当たったんだろう。奥で休んで行くといい」 そう言い、ジゼルはリトの手元から赤い本を取り上げようとした。 弱々しい力で本を掴んで抵抗する。 「待って。この本にあった、古代魔法語は? わたしは何を見たの?」 「大丈夫。たいしたものじゃない」 そばにアンセムがしゃがみこんだ。
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