執事と令嬢

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執事と令嬢

これは、おそらく、世界のどこかでのありふれた出来事。 「―さま、お嬢さま!」見知った声が耳に入ってくる。 「なによ、おきてるわよ。」目をこすりながらムクリとする。 「いいえ、3秒前までスヤスヤでした。お食事やご支度を考えると普段より5分と21秒、遅刻です。」 執事がカーテンを開けると部屋に朝日が入ってきた。 「はぁいはい。」あくびをしながらベッドから出る。 「起きましたね。それでは私は車の手配をしてまいりますので、お嬢様はお食事をすませてください。」 「あ、そう、言い忘れてたけど、私、今日は歩いて学院へ行くわ。」 「なんと!それでは25分と53秒の遅刻に・・・や、25分と58秒の遅刻になりました。な、なぜ・・・?」 「川のほとりを歩いて行って、あの紫色の鳥が川で水浴びしたり、石をひっくり返したりするところを見てみたいわ。何かの本で読んだの。」 部屋の窓から見える、木の枝の先に止まっている鳥を指さす。日の光を浴びて翼が輝いて見える。 「カラス・・・そんなことより、お嬢様のようなお若い時の貴重なお時間はご学友とのこみゅにけーしょんに使われた方が有意義ではないかと・・・」 「『そんなことより』?あなたは見たことあるの?」 「!・・・ないですが・・・」 「じゃあ十分にユーイギね。さあ、歩きやすい靴を準備してちょうだい。」 「ぐぬぬ。はあ、わかりましたよ・・・全く、誰に似たのやら・・・。」 執事はドアをパタンとして部屋から出ていき、令嬢は鼻歌交じりに登校の準備を始めた。
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