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「佐々木創也です! 宜しくお願いします!」
「皆さん、仲良くしてあげてね。じゃあ、席は美湖さんの隣ね」
佐々木創也――創くんと私は、最初から他の誰より近かった。
隣席が埋まると聞いてから、心配が噴火してやまなかったものだ。人見知りゆえ、上手く接する自信がなかったのである。
「宜しくね、美湖ちゃん!」
「……よ、宜しくね」
しかも、創くんは初っ端から悪目立ちしていた。というのも、服装や所持品から香る貧乏臭さが彼にはあったのだ。後光の似合う笑顔だけが、浮いていた覚えがある。
当然、不快感はあった。けれど、偏見を押し出すほどではない。私たちは皆、包容することを決め、仲間の一員として彼を迎えた。
そんな創くんは、休み時間になるとお決まりの行動を取った。両手を皿にして――まずは隣の私から――時計回りに巡回していく。
「美湖ちゃん、消しカスちょうだい!」
「いいよ」
彼の目的は、いつも消しカスだった。お菓子でもティッシュでもなく、ゴミでしかない消しカス。最初に求められた時は、首を傾げてしまった。
元々、消しカスで遊ぶ子自体はいたけれど。自分の出したカスだったし。
〝欲しい〟じゃなくて〝必要〟なら、渡さない方が意地悪だよね――。
思考を共有していたクラスメイトは、皆が皆、快く消しカス集めに協力した。
特に私は、消しカスを必要以上に出す子供だったし。不用品扱いしていたし。
「美湖ちゃんの消しカスって、他の子より綺麗だよね」
「……う、うん。まぁね」
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