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あまりに物騒なニュースが鼓膜を突いた。思わずピタリと動きを止め、視線をテレビへと向ける。何の気なしに点けてただ垂れ流しにしていただけだったその液晶を食い入るように見つめていると、そこには此処からそう遠くない場所にある小さな公園が映し出されていた。  「嘘だろ……」 事件の内容だけでも身の毛がよだつというのに、まさかそれが自分が住んでいる徒歩圏内で起こった事だなんて、にわかには信じ難い。 思わずそんな呟きがぽつりと口から溢れた次の瞬間、トーストの上に乗せていた目玉焼きがずるりと滑るのを視界の隅に捉える。「あ、」と声を発した時にはもうそれは床の上に落下していた。  「…まじかよ、くっそ」  悪態を吐きながらもテーブルの上に置いてあるティッシュボックスからティッシュを数枚引き出し、慌ててその場にしゃがみ込む。 フローリングの上、無惨にも黄身が潰れ、オレンジに近い色の液体をぶわりと溢れ出させているそれは数秒前まではたしかに綺麗な目玉焼きだった。自分の中で過去一番だと言っても過言ではないほどには上出来で、作り上げた瞬間から口の中に運ぶのを楽しみにしていた。まさか一口も食べる事なく床の上に落としてしまうだなんて微塵も想像していなかった。 『―――尚、遺体からは鼻と耳が切り落とされており、両手もまだ見つかっていないとの事です』 テレビから流れてくる無機質なニュースキャスターの声に、ぶわりと肌が粟立つ。 どこの誰かも知らないこの被害者もきっとその日 目を覚ました瞬間はまさか自分が殺害された挙句にその身をバラバラに切り刻まれるだなんて、思いもしなかったんだろう。  「……」 なんとも言えない後味の悪さを抱えながら、汚れた床を拭く事に集中した。
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