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中年くらいの小太りの男。ボサボサの髪の毛や毛玉だらけのスウェットを見る限り、あまり清潔では無さそうだ。そんな印象くらいしか持てないような男が一体どうしたというのだろう。頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる俺を見た芝田は「和真、あいつ知らねえの?」と質問を投げかけてきた。その質問に素直に頷く。 「知らないけど…あの人がどうかしたのか?」 「あいつさ、いっつもチンコ勃たせてDVD選んでんだよ」 「……は?」 想像だにしない言葉が返ってきてポカンと口を開けては呆然としてしまう。芝田はギギ、と低い音を出しながらパイプ椅子の方向を変え、レジの奥にある防犯カメラの映像が映っている液晶に向き合った。 マウスを何度かカチカチとクリックした後「ほら、見てみろよ」と俺に画面が見えるように自身の身体を少し左にずらす。言われるままに前のめりになるように画面に顔を近づけ注視すると、そこに映るさっきの小太りの中年男の股間はテントが張っているかのようにピンと張り詰めていた。 「マジじゃん…」 「だから言ったろ」 よく見ると男が居るそこはアダルトコーナーらしかった。となると、反応してしまうのも無理はない。……のか? そんな事を頭の中でぐるぐると考えていると芝田がげんなりとした表情で口を開いた。 「あいつさ、最近よく見かけるようになったんだけどいっつも強姦もののAVしか借りねーんだよ」 「そうなのか?」 「うん。しかも殺しとか、結構グロい系のやつ」 世の中には色んな人がいる。そういう、所謂“エログロ”という類の物に興奮を覚える人もそりゃあ居るんだろう。需要があるからこそ、そういうジャンルがあり、作品があるわけだ。 そう頭では分かっていてもやはり目の当たりにしてしまうと、どうしても少なからず嫌悪感という物を抱いてしまうのが人間だと思う。芝田がげんなりしてしまう気持ちも十分に分かった。 「げ、こっち来た」 そんな事を悶々と考えていれば芝田の焦ったような声が鼓膜を突いた。パイプ椅子から立ち上がった芝田は「お前会計しろよ」と捨て台詞のようにそう吐き出し、逃げるように暖簾で仕切られている奥へと姿を消した。 そして芝田と入れ替わりになるようにあの小太りの中年男が重たそうな身体をのそのそと重たそうに動かし、レジまで足を運んできた。
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