第1話 ヒモ以外ヒモじゃないの

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 そして、二十四歳の時、ピチーチは書籍を出版する。彼女初の著書『私はピチーチ』は自国で五十万部をこえるベストセラー。それ以来、全国各地で「女性に好かれるためのアドバイスを伝授してほしい」という依頼が殺到し、恋愛アドバイザーとして引っ張りだことなっている。 「大事なのは『うん、うん』と、女性の話にひたすら肯定してあげること。自分のことを首振り人間だと思って、首を縦に振り続けるのです!」  ピチーチは話を続けた。ここはくすっと笑ってほしいところなのだが、受講生たちはみんながみんなまじめに聞いている。 「ピチーチ先生」  その時、ひとりの青年が挙手した。至る場所で講義をしてきたピチーチだが、この青年のように彼女の話を遮ってまで問いかけようとする生徒はまれである。ピチーチは「どうぞ」と言って、自分に質問することを許可した。
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