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7.舞踏会
「ルシア!」
セリーナは、国王の執務室から出て来た騎士団長と、副団長のルシアを見つけて駆け寄った。
鎧姿の二人は、丁寧に頭を下げた。セリーナは、背の高い二人の顔を覗き込む様に言う。
「噂の事を聞きました。団長とルシアが不倫なんて、ある訳無いですよね?!」
団長は頷いた。
「その様な事実はありません」
「ですよね! 良かった!」
「ですが、今度の舞踏会はセリーナ様にとって大切なお披露目の場。白百合騎士団は警備に関わるべきではないと」
「父が……そう言ったのですか」
「私自身そう思います」
「団長、でも私は、白百合騎士団に警備してもらいたのです」
セリーナは、ルシアを見た。ルシアは、悲し気に微笑んで何も言わない。
「ルシア、どうして何も言ってくれないの? あなたらしくない。変よ!」
その瞬間、ルシアは、暗く鋭い目でセリーナを見た。
「私らしくない、とは? セリーナ様は私の何を御存じで?」
セリーナは、目を見開いて固まった。初めてルシアを怖いと思った。
「セリーナ様は、私の事を何も知らないではないですか。分かった様な事を言わないで下さい」
「ルシア」
団長が、ルシアを諫めた。
ルシアは冷たく微笑んだ。
「どうか、もう白百合騎士団の事など、お忘れください」
ルシアは、そう言って歩き去って行く。セリーナは、ルシアの背中に声を掛ける事が出来なかった。
瞬く間に時は過ぎ、舞踏会当日を迎えた。
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