7.舞踏会

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 大勢の貴族たちが出迎えた。  大広間に入り、セリーナは青ざめる。  ひそひそと遠巻きに噂する着飾った男たち。華やかなドレスの女たち。  周りが敵ばかりに見える。セリーナの顔がだんだんと下へ向く。  呼吸が浅く、早くなり、足が止まりそうになった。 「セリーナ様」  ふいにルシアの声が聞こえた。セリーナは、顔を上げる。どこから聞こえたのか。幻聴か。分からなかったが、その声は導く光の様に感じた。 「大丈夫です。私がいます」  とても近くに聞こえた。 「ルシア……」  セリーナは、呟く様に応えて胸を張り、堂々と歩いた。  父と共に広い大広間を横切り、用意された椅子の前に立った。  王妃と兄王子が入って来た。大広間を横切り、セリーナと同じように用意された椅子の前に立った。  国王が宴の始まりを宣言し、楽団が音楽を奏で始めた。  皆がペアを組んで踊り出す。    婚約者の一人、公爵の息子がセリーナの前で跪いた。  セリーナは、緊張して固い顔になる。先生以外では、初めての相手だ。  差し出された手に自分の手を乗せた。微かに手が震えた。  大きく深呼吸し、すくっと立ち上がる。 (大丈夫よ、セリーナ)  ――”まずダンスを楽しまれたらどうでしょうか”。 (楽しめばいいのよ)  二人は大広間の中央に進み出ると、音楽に合わせて踊り始めた。  緊張しつつも優雅なステップを踏むセリーナ。  公爵の息子が安心した様に微笑んだ。 (長い間、心配をかけていたわよね。ごめんなさい)  セリーナは、心の中で謝った。そして思った。 (この方、とても踊り易くて楽しいわ)  セリーナは、微笑んだ。公爵の息子は、今度は嬉しそうに微笑んだ。  ドン!  突然、セリーナの背中に衝撃があった。他のペアの男が、セリーナにぶつかって来たのだ。 「きゃっ!」 「セリーナ様!」  公爵の息子との手が離れる。バランスを崩したセリーナは、床に倒れそうになる。  
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