7.舞踏会

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 がしっ! と、セリーナの身体を支える腕があった。  セリーナは、目を見開いた。目の前にルシアがいた。 「ルシア!」  ルシアは、凛々しい男性用の黒い礼服姿だった。前髪の一房がはらりとこぼれた。  セリーナは、ルシアの支えで立ち上がった。 「お怪我はありませんか」 「ないわ。ありがとう、ルシア。でも、どうしてここに」 「そちらの方と決着を付ける為に」 「え?」  ルシアは、セリーナにぶつかって来た男に向き直った。 「あれはルシア嬢の婚約者のベルーナ伯です」  公爵の息子が小声で教えてくれた。  ルシアとベルーナ伯が睨み合う。  会場がざわめく。  国王が立ち上がろうとして、王妃がさりげなく制した。 「ベルーナ伯、お怪我はありませんか」  セリーナが言った。会場に響き渡るような、強い声だった。  緊迫した空気が消えて、ベルーナ伯は少し固い顔で頭を下げた。 「セリーナ様、申し訳ありません。私、セリーナ様がお近くにいらっしゃると思うと、なんだか舞い上がってしまってしまいまして、とんだ粗相をしてしまいました」  セリーナは、ゆったりと微笑んだ。 「よいのですよ。今日は舞踏会ですから。私のお披露目など気にせず、楽しんでください」 「感謝申し上げます」 「ルシアも」  ルシアは、申し訳なさそうに微笑んだ。 「はい」 「音楽を」  セリーナの合図で、楽団がまた音楽を奏で始め、皆が踊り始めた。
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