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2.公爵令嬢ルシア
「お前、セリーナ様の話相手になれ」
公爵の娘ルシアは、8歳になった頃、父にそう言われた。
ルシアは、両親には少し風変わりな娘と思われていた。
幼い頃、絵本で読んだ騎士に憧れ、父や兄たちと同じ様に国王に仕える騎士になりたいと思っていた。
女の子と遊ぶより、兄たちと遊びたかった。兄たちがやるような、狩りや乗馬、チェスを学びたがった。母は、女の子らしく振舞う様にと事ある毎にルシアを叱ったが、まったく効果が無かった。女の子の服は断固拒否して着ようとしないので、男の子の服を着せざるを得なかった。家の中だけならまだいいと父もそれを許していた。
ルシアは、正直、王女の相手などしている暇はないと思っていた。
――私は、騎士の修行をしなければならない。ただでさえ、女に生まれて遅れを取っているのだ。話し相手などしてられない。
ルシアは、当然の様に不満をあらわした。
「どうしてですか?」
「お前が、セリーナ様のお年に近い、公爵家の娘だからだ」
ルシアは、父にそう言われて、子供ながらに拒否できないと察した。それでも不満は残る。
父は、いつまでもむくれている娘に、悠然と微笑む。
「お前、騎士になるのが夢なのだろう? セリーナ様のお相手をするという事は、王家に仕える騎士になるという事ではないのかな?」
ルシアは、喜々として目と見開き、口を開いた。
「父上!」
ルシアは、父に飛び付いた。
「騎士になっても良いのですね!」
「う、うむ、まあ……今回ばかりは国王の御命令であるから、な」
父はルシアに、やる気になってもらいたいが為に言った事で、騎士になることを許したつもりは無かった。だが、父の狙い通り、ルシアはやる気になる。
「誠心誠意お仕えします!」
「うむ、頼むぞ、ルシア」
「はい!」
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