2.公爵令嬢ルシア

1/1
前へ
/12ページ
次へ

2.公爵令嬢ルシア

「お前、セリーナ様の話相手になれ」  公爵の娘ルシアは、8歳になった頃、父にそう言われた。  ルシアは、両親には少し風変わりな娘と思われていた。    幼い頃、絵本で読んだ騎士に憧れ、父や兄たちと同じ様に国王に仕える騎士になりたいと思っていた。  女の子と遊ぶより、兄たちと遊びたかった。兄たちがやるような、狩りや乗馬、チェスを学びたがった。母は、女の子らしく振舞う様にと事ある毎にルシアを叱ったが、まったく効果が無かった。女の子の服は断固拒否して着ようとしないので、男の子の服を着せざるを得なかった。家の中だけならまだいいと父もそれを許していた。  ルシアは、正直、王女の相手などしている暇はないと思っていた。  ――私は、騎士の修行をしなければならない。ただでさえ、女に生まれて遅れを取っているのだ。話し相手などしてられない。  ルシアは、当然の様に不満をあらわした。 「どうしてですか?」 「お前が、セリーナ様のお年に近い、公爵家の娘だからだ」  ルシアは、父にそう言われて、子供ながらに拒否できないと察した。それでも不満は残る。  父は、いつまでもむくれている娘に、悠然と微笑む。 「お前、騎士になるのが夢なのだろう? セリーナ様のお相手をするという事は、王家に仕える騎士になるという事ではないのかな?」  ルシアは、喜々として目と見開き、口を開いた。 「父上!」  ルシアは、父に飛び付いた。 「騎士になっても良いのですね!」 「う、うむ、まあ……今回ばかりは国王の御命令であるから、な」  父はルシアに、やる気になってもらいたいが為に言った事で、騎士になることを許したつもりは無かった。だが、父の狙い通り、ルシアはやる気になる。 「誠心誠意お仕えします!」 「うむ、頼むぞ、ルシア」 「はい!」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加