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3.セリーナとルシア
「ごきげんよう」
自分の部屋に現れたルシアに対して、王女セリーナは微笑んだ。ルシアは、初めてお仕えする方が優雅で美しい方と思い、嬉しく顔を赤らめた。
「お初にお目に掛かります。アルベイン家のルシアと申します」
「聞いています。この度は、私のわがままを聞いてもらい、かたじけなく思います」
セリーナは、ルシアを部屋の中ほどにあるソファに座るよう勧めた。二人はソファに座り、向き合う。
ルシアは、率直に切り出す。
「何のお話をいたしましょう?」
「何の話をすればいいのかしら」
「お好きな話を」
「ルシアは、何が好き?」
「食べ物ですか? それとも」
「なんでも。どんなものが好きなの?」
「私は、騎士になるのが夢でした」
セリーナが、目を輝かせる。
「まあ! 素敵!」
ルシアは、顔を赤くして目を見開く。
――セリーナ様に素敵って言って貰えた!
「この度、私はセリーナ様にお仕えすることになりましたので、言うなれば夢が叶ったのです」
セリーナは、目を潤ませた。
「そうだったの。良かったわ。迷惑をかけていると思っていたから」
「迷惑だなんて! そんなことありません!」
父に気付かされるまでは迷惑と思っていた事など、ルシアは、おくびにも出さなかった。
「セリーナ様は、何がお好きなのですか?」
「え?」
「お好きなものですよ。私は言いましたよ」
「え……そうね……」
セリーナは、考えを巡らせて、じっとルシアを見た。
「ルシアだわ」
「え?」
「ルシアが好き。女の騎士なんて、かっこいいわ!」
ルシアは、ますます顔を赤らめる。
「ほ、本当ですか?」
セリーナは、微笑んだ。
「本当よ。ルシアは、夢を叶えた。それは偶然じゃなく、ルシアに夢を叶える強さがあったからだと思うの。ルシアに憧れるわ。私もルシアの様に強くなりたい」
ルシアは、顔を赤くしたまま微笑む。
「セリーナ様は充分お強いと思います」
「……そうかしら」
「だって、セリーナ様は今も堂々としていらっしゃるではないですか」
セリーナは、驚いて、微笑んだ。言葉は無く、目に涙が溢れ頬を伝って落ちた。
ルシアは、顔を青くした。
「え、私、何か、失礼な事を?!」
「違うの。違うのよ」
セリーナは、微笑んだ。
「ルシアが、元気で良かったと思ったの」
「はい! 元気です……?」
ルシアは、セリーナが何を言いたいのか分からず首を傾げた。
「良かった」
セリーナは、頬を濡らしたまま微笑んだ。
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