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王宮の大広間に多くの紳士淑女が入って行く。
警護に白百合騎士団はいない。
控えの間で、青いドレス姿のセリーナは震えていた。
「ダメです。無理です。あんな、人が一杯いる所に出て行けません!」
「セリーナ、いい加減にしないか」
父王が、呆れた様に言った。
「ダメなものはダメです! 今からでも、白百合騎士団を呼んでください! でないと私……!」
「セリーナ」
王妃が、セリーナを見つめた。
「御祖父様がどうして亡くなったか、覚えてる?」
「え?」
セリーナは、きょとんとなる。
「流行り病で……。もうお年でしたし、仕方がないかと……」
「そうよね。どんなに身体を守っても、人間、死ぬ時は死ぬわ」
母の言葉にセリーナは黙り込んだ。
母は、セリーナの両手を自分の両手で包み込んだ。
「まだ小さかったあなたに怖い思いをさせた。それについては申し訳なく思っている。死んでも償いきれない」
「お母様……」
「でも、永遠に安全な場所などない。白百合騎士団がいようがいなかろうが、あなたは一人で立たねばならない。その時が来たのよ」
――”セリーナ様は今も堂々としていらっしゃるではないですか”。
セリーナの脳裏に、ルシアの言葉が蘇った。
その時が来たのだ。
セリーナは胸を張った。
父王がセリーナに手を差し出した。
セリーナは、自分の手を軽く乗せた。エスコートに従って歩き始める。
控えの間を出て、大広間へ入った。
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