Kの愛

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◇ 「お、皇明」 廊下を歩いているとふいに名前を呼ばれた。足を止めて振り返ると、そこには同じ学科の友人が「よ」と片手を挙げていた。 「お前も今終わったとこ?」 「ん」 「じゃあ途中まで一緒に帰ろーぜ」 そんな成り行きで共に大学を後にして、駅の方に向かう。 「そういやお前これから暇?ちょっと駅前ぶらつかねえ?」 「あー…わりぃ、今日はちょっと無理」 「なに?女?」 にやにやとした笑みを携えてそう聞いてきたそいつに「まぁ」と肯定を表す返事を返せば、そいつは笑みをいっそう深めた。 「皇明んとこって仲良いよなー、しょっちゅう会ってんじゃん」 「しょっちゅうってほどでもねえよ」 「いやいや、多いほうだろ」 小さい頃から常に一緒に居た俺らからすると、むしろ大学が別になった今の方が会う頻度は減った。けれど、傍から見るとこの頻度は“多いほう”らしい。 つくづく、感じ方ってのは人それぞれなんだなと実感する。 「お前らって幼なじみなんだっけ?」 「そーだけど」 「いいよなー、そういうの」 「……」 思わず足を止めてしまいそうになった。 どうやらこいつはよっぽど“幼なじみ”という関係性に憧れているのか、そのワードが出る度に今みたいに「いいよなー」とぼやく。 俺には何が“いい”のか全く理解できない。 その時、ポケットの中でスマホがちいさく振動した。取り出して確認してみれば、里茉からメッセージが届いていた。 「……なあ」 里茉から届いたメッセージを読んでから、隣に立つ友人に声を投げると「んー?」と間延びした返事が返ってきた。 「俺ちょっとスーパー寄ってく」 「スーパー?なんか買うん?」 「いや、ガチャガチャする」 「は?ガチャガチャ?」 うん、と頷いた俺にそいつは目をぱちくりさせながら「ガチャガチャって、ガチャガチャ?」と、壊滅的な質問を投げかけてきた。
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