1:出来損ないシンデレラ

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はぁ、はぁと息が切れる。 心臓はバクバクと音を立て、今にも口から飛び出そうだった。 私が引っ張ったことにより、後方にくん、と傾きながら急ブレーキをかける如く足を止めたその男の人が、ゆっくりと此方を振り返る。 そしてその顔を見た瞬間「へ…」と間抜けな声が零れ落ちてしまった。 「…なんすか…?」 私と向き合うように体ごと反転し、怪訝そうに眉を寄せるその男の人は、全く知らない人だった。つまり、人違いだったのだ。 私が脳内で思い描いていた人――(はやて)くんに、シルエットこそは酷似していたものの、顔は似ても似つかなかった。 例え本当に彼であったとしても、そもそも今さらこんな風に引き止めて、私は一体、何を言うつもりだったのか。 どれだけ考えても答えは一向に出ない気がしたから、人違いで良かったのかもしれない。 ホッとしたような、残念なような。 なんとも言えない感情が、渦を巻く。 強ばっていた身体から一瞬で力が抜けてしまい、気を抜けばまたしゃがみ込んでしまいそうだったけれど、謝罪するのが先だ。 「あの……」 「なに?お前、逆ナンされてるん?」 私が“すみません”を言うよりも早く、新たな声が響いた。 人間違いで引き止めてしまった男の人の背後から、ひょこりと顔を見せた茶髪の男の人。 どうやらこの2人は友達のようだった。
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