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振動していたのは、私のスマホで、ディスプレイに映し出されている名前は、この後 会う予定になっている友人のものだった。
「もしもし、美沙?」
通話に繋げるなり名前を呼ぶと、機械越しに『もしもーし、もう着いた?』という美沙の声が返ってきた。
「駅には着いたよ。今、カフェに向かうところ」
『寧々、あんたほんとにひとりで電車乗れるの?』
「…うーん……ちょっと、厳しいかも」
弱気な声を出した私に、美沙はプッと吹き出すように笑う。
『やっぱりね~。どうせどっちに行けばいいかも分からなくて、キョロキョロしてんでしょ?』
「……おっしゃる通りです…」
『そんなことだろうと思ったよ。仕方ないから、駅まで迎えに行ってあげる』
「えっ、それはいい!ほんとに!タクシー使うから!」
『そんなのタクシー代が勿体ないでしょ。てか寧々が一人で辿り着ける訳ないって分かってたから、もう向かってるし~』
あと10分もあれば着くから、と言われてしまえば、もう黙るしか無かった。
さすが美沙だ。
中学、高校と同じで、ずっと変わらずに仲良くしてくれた彼女には、私のことなんて容易く分かってしまうのだと思う。
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