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「寧々、仕事いつまで休みなの?」
「1月5日まで休みだよ」
「結構 長期休暇じゃない?何連休?」
「えっと……10連休?かな?」
指折り数えながら首を傾げた私に、美沙は「超いいじゃん!」と興奮気味に声を荒げた。
「ほんとは6連休だったんだけど、東京に観光に行くって行ったら、休み増やしてくれたの」
「めちゃくちゃ優しいね、店の人」
高校を卒業後、花を育てるための知識を養う学校に通い、今のちいさな花屋に勤めて、もう2年の月日が経とうとしていた。
私が働く花屋は店長と奥さんの夫婦2人で店を切り盛りしていて、他人を雇うのは私が初めてらしく、まるで本当の娘のように可愛がってもらっている。
大好きな花と優しい店主さんたちのおかげで毎日充実しているし、自分が今置かれている環境がとても恵まれたものであるということは自負しているつもりだ。
うん、と笑った私に、美沙も安心したように頬を持ち上げた。
その後も仕事の話や美沙の彼氏の話など、話すことは尽きず、気づいたらあっという間に夕方になっていた。
「あの店で5時間も居たとか信じらんないんだけど」
「ほんとにね。でもまだ話し足りない~」
嘆く私に美沙は「分かる」と困ったように笑う。
ヒールをカツカツと鳴らし、少し前を歩いていた美沙は「で?」と振り返る。
「どーする?この後」
「んー……」
ホテルのチェックインの時間まで、まだあと少し時間が残っている。けれど何処か店に入るのは微妙な時間だ。
「K大、行く?」
唸るような声を出して考えあぐねていると、思いもよらぬ言葉を前方から掛けられて、ギョッと目を見開いてしまう。
「いっ、行かないよ!」
「え、行かないの?」
「当たり前じゃん!逆になんで行くの!」
「えぇ?だってここからK大近いし、むしろそれが理由でさっきのカフェ選んだのかな~と思ったけど、違うの?」
こてんと首を傾げてそう聞いてくる美沙に、ブンブンと首を横に振る。
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