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そして十数分後、目的地であるホテルに到着した。
タクシーの運転手さんにお金を払って、ホテルのフロントに向かう。
そしてフロントに立っていたホテルマンの人に、信じ難い事実を告げられた。
「え……?予約が……できてない?」
さっき告げられた言葉を辿々しく復唱した私に、ホテルマンは困ったように眉を下げて「はい」と頷いた。
「竹内 寧々様、ですよね?」
「はい、そうです」
「何度も確認していますが、そのお名前での御予約は見当たりません」
そんなはずはない、と思い、ホテルの部屋をネット予約した時の確認メールを探してみたけれど、フォルダ内のどこを探しても存在しなかった。
もしかしたら、予約が確定する前にページを閉じてしまったのかもしれない。
以前ネットショッピングをしている時もそういうミスをしてしまったことがあるから、その説が濃厚のような気がした。
「あの…じゃあ、どこか開いてる部屋はありますか?」
「誠に申し訳ないのですが本日満室を頂いておりまして…」
ダメ元で聞いたそれも、見事に打ち砕かれてしまった。
すみません、と頭を下げるホテルマンに「とんでもないです!」と首を横に振った。これは間違いなく私のミスであり、ホテル側には一切の落ち度もない。
それなのに深々と頭を下げてくれるホテルの人達に「ありがとうございました」と私も頭を下げて、その場を後にする。
とりあえず近くにあった駅に向かい、切符売り場まで来たところで、はぁ~と長い溜め息を零しながら、その場にしゃがみ込む。
せっかく東京に来たっていうのに、とことんツイていない。
やっぱり私は、どこに居ても“私”なんだと痛感するばかりだ。
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