流浪

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それから救急対応で請け負った患者のオーダーなり指示なりを入れ終えて、帰宅すれば。 机にはふわふわの玉子が乗っかった、オムライス。何故か中央にはデカデカと描かれたハートマーク。隣に書き置きされたメモを確認すれば『一分半くらいレンジであっためてください。愛情たっぷり込めて作りました♡』といった文章が羅列している。…美味しそうだけどなんか重たいな。…気持ちが。 「…ベッド使っていい、って言ったのに」 リビングには白衣を掛け物がわりに、ソファーで眠っている神代の姿。こういう時に遠慮されるの、逆に気が狂うんだけど。 オレが帰ってきた音にも気づかないくらい、神代は爆睡していた。眠っていると、幼さが3割増しに見える。---5才も年が違えば、そう思えてしまうのも無理はない。 ふと、その頬に自分の手の甲を当ててみる。すり、と触れた肌はやはり若さもあるのだろうか、きめ細やかで。 そんな感想を抱いたところで、---現実に戻る。 やめておけ。コイツは、神代は、---オレとは“違う”人間だ。“普通”の男なのだから、コチラ側の人間ではないと自分に言い聞かせる。 自分という“穢れた”人間が関わっていいワケがない。 ---神代という男に絆されて、すっかり自分が普通になったような気がしていたのだ。…悍ましくて、嗤える。
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