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「び…っくりした。いきなり背後から話しかけないでよ」
「あー、そうすよね、すみません。朱架さんの姿が見えたから、つい」
薄く笑った海望くんは、すぐにもう一度「で、何 頼むんですか?」と首を傾げる。
「うーーーん……抹茶ラテかなぁ」
「じゃあ俺はこの、クリスマス限定のキャラメルのやつにします」
「海望くん、甘いの飲めるの?」
「まあ一応。でもそんなに量は飲めないんで、飲み干せなかったら朱架さんに託します」
「えぇ……太るじゃん」
「大丈夫っすよ」
他人事のようにそう言った海望くんはひょいっとあたしからメニューを奪う。いつの間にか前の女の子たちは会計を済ませていたらしく、次はあたし達の番だった。
レジにスタスタと歩いていく海望くんの背中を追いかける。
そして店員さんに抹茶ラテとクリスマス限定ドリンクのキャラメルをオーダーした海望くんが当たり前のように財布の中からクレジットカードを出したから、慌てて口を開く。
「えっ!あたし払うよ」
「いや、俺から誘ったし、いいですよ」
「でも……」
「それに俺、女の子に金払わせんの嫌なんすよね」
完璧な容姿で、さらにはそんな事を言われてしまうと、もう黙るしかなかった。黙って財布をカバンの中に戻したあたしに、海望くんは満足そうに口角を上げた。
この子、本当に年下なんだろうか。
2ヶ月ほど前にちょろっと遊んだ一回り年上のリーマンより、懐が深いし落ち着いている気がする。
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