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「っん、あぁ……っ!」
―――まさか指だけで3回もいかされるなんて、予想外もいいところだった。
頭がぼうっとする。視界が霞む。四肢には全くといっていいほど力が入らず、くたりと横たわるだけになっていた。
待って、って何回 言ったか分からない。何度も叫んだのに、たったの一度も待ってくれなかった。
ハァハァと乱れた息を整える暇もなく、下腹部に強烈な圧迫感が走った。
断りもなく根元まで一気に入れるとか、どうなの?そう言ってやりたいのに「っふ、ぅ」と、くぐもった声を出すのが精一杯だった。
あたしの腰を掴んだ海望くんは「きっつ…」と眉を寄せる。歯噛みするその表情も もちろん色っぽくて、視覚的には最高だけど、いろいろとキツい。
そう。
どう考えても、キツいのはあたしの方だ。
「あ、っ、あ」
断続的に弾き出されるあたしの声と共鳴するみたいに、スプリングが軋む。ギッギッと低く響き渡るそれは、まるで咽び泣いているように聞こえた。
肌の上を滑るように上昇してきた大きな手が、がしりと首元を掴む。そのままググ…と力が込められて、咄嗟にその腕を掴んだ。
「う゛っ……ぁ、」
ちょっと待って、なにこれ。
まさかの、そういう系?
首とか絞めて興奮しちゃう系?
唸るような声を上げるあたしに、海望くんは「苦しい?」と、当然だろとしか言えない事を聞いてくる。出来ることならぶん殴ってやりたかった。
「いいすね、その顔」
酸素を求めてもがき苦しむあたしを見下ろす彼の瞳は、痛いほど冷たい。なぜだか分からないけれど、その瞳を見ているだけでゾクゾクした。薄く浮かべられた微笑にすら、お腹の奥が疼いてしまう。
首からするりと手が離れていく。やっと開放されたと思ったら、今度はこの男、覆い被さるようにしてあたしの首筋に噛み付いてきた。
「っぃ、た」
ギリリ、と歯が皮膚に喰い込んでいるのが嫌でも分かる。
その白い首筋に噛み付いてやろうと思ってたのに、なんであたしが噛み付かれてるんだろう。そんな疑問が頭を過ったけれど、もう意識を繋ぎ止めておくだけで精一杯だった。
朦朧とする意識の中、スプリングが軋む音がどんどん大きくなる。
咽び泣いているような音は次第に、悲鳴のように早く、激しくなっていく。
「朱架さん」
生理的な涙で霞む視界に映った海望くんは、目元にかかるくらいの前髪を掻き上げ、とても楽しそうに口角を上げていた。
「口に出していいすか」
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