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episode 1
つくづく思う。
恋って、超めんどくさい。
「どうしよ〜〜、つらい〜〜、涙止まんない〜〜…っ」
目の前で涙を流す友人――ルナの頭をまるで小さい子供をあやすかのようによしよしと撫でる。
聞くところによると、どうやら2年ほど付き合った彼氏と別れたらしい。
可哀想だと思う気持ちがないわけじゃない。誰だって泣いている人間が目の前にいたら少しは同情したり心配したりするもんだろうし、それがよく知っている人物なら余計に、だろう。
頭を撫でてあげたり、ハンカチを差し出したり、そのくらいはすると思う。
そういうあたしも例外ではなく、鞄から取り出したマリメッコのハンカチを、未だ泣きじゃくる友人に差し出した。
「ありがとう〜〜……っ」
「ん。いいよ」
そう。
可哀想だと思わないことは無いけれど、それと同じくらい、理解できないという気持ちもある。
こんなに泣いて、傷ついて、自分をすり減らしてまで、恋をする意味が分からない。あたしからすればルナのその2年は無駄になったも同然だと思う。時間と労力と気力の無駄。
恋って冗談抜きで無駄しかないと思ってるんだけど、それって、あたしだけ?
「もう、泣きすぎ」
「うう〜〜、だってぇ〜〜」
「男なんて星の数ほどいるんだからさ。ね?」
使い古されたセリフを口にしたあたしに、ルナは顔をくしゃりと歪める。おまけにあたしが差し出したハンカチも、くしゃりと握っている。
ちょっとそれお気に入りのハンカチなんだけど!ぐしゃぐしゃにしないでよ!と内心 思いながらも、口に出すのはグッと堪えた。
なんせ相手は失恋して傷心中の、か弱い女の子だ。そんな相手を罵倒できるほど、あたしは冷徹に出来ていない。
「星の数ほど居ても、出会いなんか早々ないじゃん〜〜!!!」
「大丈夫。そう言うと思って、さっき合コンのセッティング頼んだから」
親指を立ててグーのサインをするあたしに、友人はきょとんと目を丸くする。
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