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それからというもの。
私は年に二回、お祭りのたびに彼女の店を訪れるようになったのである。
不思議なことに、品数は毎年増えていっているように思われた。最初はネックレスだけだったのが、次第にイヤリングやピアス、指輪やブレスレットまで。どのアクセサリーも、薄ピンク色の貝殻を加工したもので、私の好みストライクの品ばかりなのだった。
「俺あんまアクセサリーは詳しくないけど……うーん、結構地味じゃない?」
「ええ、そんなことないわよ。よく見て見て!」
「ちょ、やめてくれって、恥ずかしいって!」
残念ながらその魅力は、私にしかわからないようだった。夫はちょっと地味なような気がする、とコメントしてきたのみである。
まあ、それは彼がウブな性格だから、というのもあるだろう。私が主に好んだのはネックレスだったので、ネックレスに注目しようとすると自然と胸の谷間をガン見することになる。多分、それが恥ずかしかったのだろう。もう結婚して子供もいるし三十路にもなったのに、相変わらず可愛らしい人である。
対して娘の方も、私のアクセサリーが気に食わないのか微妙な顔をするばかりだった。あまり好きじゃない、とか。なんか嫌、なんてことを言うばかり。私の娘でありながら、センスや好みに関しては遺伝することがなかったらしい。
しまいには、“それは仕事につけて行かない方がいいよ”という始末だ。確かに、パートタイムの事務の仕事に身に着けていくには華やかすぎる気もするが。
――こんなに綺麗なのになー。何で駄目なのかしら。
私は夢中でお祭りのたびに店に通い、貝殻アクセサリーを集め続けたのである。不思議なことに、あの店で品物を買っているのはいつも私一人だった。
転機が訪れたのは、娘が小学校五年生になった時のこと。
その日は晩御飯の後、二人でぼんやりとテレビを見ていたのだった。夫は今日は出張で帰ってこない。だらだらとテレビのニュースを流していた時、キャスターが緊張した面持ちでニュースを読み上げたのである。
『次のニュースです。……●●県〇〇市の廃棄物処理場にて、身元不明の複数の死体が発見されました。どれも焼死体であり、十代から三十代の男女と見られていますが……』
「うっわ、怖い。人を殺して焼いて、廃棄物処理場にしれっと捨てたってこと?物騒な世の中ねー」
〇〇市、は私達が暮らす市の名前だ。近所でそのような事件があっても、私にとっては他人事でしかなかった。
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