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季節は流れて冬になった。この数ヶ月で、俺の周りの環境は大きく変わった。
最近は毎日、原くんや福尾くんをはじめとした羽有人ばかりとつるんでいる。クラスでのおしゃべりも、遠足の班分けも、放課後一緒に遊ぶのも。羽有人、羽有人、羽有人。
一方、あんなに仲の良かった豪とは少し疎遠になっている。俺だけじゃない。皆なんとなく、羽有人と羽無人に分かれて生活を送るようになっていた。まるでクラスの真ん中に透明な仕切りでもできたみたいに。
そんなある日、事件は起こった。
「寺下の財布が盗まれた。犯人が分かるまで、今日は帰れないと思え」
先生が重々しい口調で宣言した。寺下くんは羽無人の中でもさらに目立たない方の子だ。見ると、彼は悲しげな顔で肩を落としている。
清く正しい性質を持つ俺の心には怒りが沸々と湧き上がった。絶対に犯人を見つけ出さなければならない。
「寺下。いつ頃財布が失くなったか分かるか?」
原くんが声を上げた。彼は強いリーダーシップを持ち、今ではクラスの中心人物となっている。
「お昼に購買に行った時はまだあったから、その後盗まれたんだと思う」
「なるほど。じゃあ掃除の時間か、五、六時限目ってことだな。その間自席を離れたのは?」
「五、六時限目は自席での授業だったから、離れてない。掃除は、俺は校舎裏の担当だったから……」
「ってことは掃除の時間に盗まれたってことだな。そして普通に考えて、その時教室にいた『教室の掃除当番』が一番怪しいってことになる。今週の当番は、」
皆の視線が、教室前方の掲示板にかかげられた当番表に注がれる。
坪井くん。鈴木くん。若菜さん。福尾くん。そして、豪。
俺は真っ先に豪の方を見てしまった。なぜなら、この中で豪だけが羽無人だったから。
羽有人は清く正しい性質を持つから、盗みなんて働くはずがない。
「ち、違う! 僕じゃないよ!」
皆の意図を察したのか豪も必死で弁明する。だけど残念ながら、状況は豪が犯人であることを如実に示している。
「青浪! 荷物見せろ!」
先生が怒鳴りながら、豪のスクールバッグの中身を乱暴に引っ張り出す。豪は半べそかきながらそれを無抵抗で受け入れる。
結論から言えば、豪の荷物から寺下くんの財布は出てこなかった。きっと見つかる前にどこかに隠したのだろう。
結局その後、皆で寺下くんの財布を捜索したが見つからず、時間切れで下校となった。その間豪は皆に白い目で見られ続け、羽のない背中を丸めて小さくなっていた。
もちろん俺も豪の坊主頭を目一杯睨みつけた。いくら羽無人だからって、盗みだなんて絶対に許せない。
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