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弔問客の群れを、ぼんやりと目で流す。姉さんの友人と知人は多かったのに、俺には姉さんだけだった。 ---そんな狭い世界の中で、生きていた。 両親はある日突然消えた。その時から、姉さんは俺の親がわりだった。優しくて、聡明で、一生懸命で。2人でずっと、生きてきたのだ。 そんな中、姉さんが出会い結婚の約束までを果たして一緒にいたのが、獅童(シドウ)汀さんだった。姉さんにとって、彼は救いに値する人物だったに違いない。 当時学生だった俺を養う為に昼夜問わず働いていた姉さんの、生きる希望で全てだったのだから。 肩を支えられるようにして、室内へと戻る。いつもより覇気のない汀さんの横顔。それが少しだけ、痛かった。
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