サクサクでしっとり

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「梨本もそれは同じだろ。知ってる」 「じゃあ、付き合わなければいいのに。も同じでしょ。知ってる」 「何回やってんだよ、このやり取り」 「付き合うまではやる。あ、2人で帰るみたいよ。約束は?」  再び立ち上がって、窓の向こうを見つめたまま訊ねると「今日はごめん、明日一緒に帰ろうだって」と淡々と言葉を並べる小山内。  明日一緒に帰ろうなんて気軽に言ってくれるものだ。軽く見るなよ、小山内を。大親友はそんな軽くないでしょ。  届くはずない遠くの相手に向けて、無声で投げかける。あたしも忍と一緒に帰るチャンスを失ってしまった。はあ、とため息を吐いて振り向く。もういいか、あたしも帰ろう。 「今日、これから告白するっぽい」  え、何で。瞬きを数回繰り返した後、あたしはさっと机の横から自分のリュックを取った。小山内の腕をつかむと、シトラスの香りがふわりと鼻を掠める。  少しだけ、頭に上りかけた血が元に戻って冷静になれた。 「行かなきゃ」 「追いかけんの? つか、何で移動すんだろ」 「他の人いるとこで言いづらいんでしょ。どこ行くかわかんないけど行くよ」  失恋しに。そう付け加えると、小山内は眉を下げてうなずいた。  残念ながら、あたしも小山内も予想は大ハズレ。賭けは失敗だ。
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