サクサクでしっとり

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 小山内が「髪の毛の攻撃力意外と高い」と目をつぶる。それを見て、あたしはくすくす笑った。笑えているから、案外大丈夫だ。  そのまま気をそらしていたかったのに、忍の「はいっ」と嬉しさで満ちた返事が聞こえて、あっという間に口元が下がってしまった。うつむくと、忍とお揃いで買ったスニーカーがひどくくたびれて見えた。  期待なんてしてなかった。最初から、実らないとわかっている片想いだ。それなのにどうして、うまく笑えないんだろう。  あたしの予想だとあと3日かかるはずだった。大ハズレだ。小山内なんて1週間もかかるって言ってたのに。 「失恋したらもっとすっきりすると思ってた。これで区切りがつくんだろうなって……甘かった」  鼻声のまま、小山内の肩に縋りつく。嗚咽を押し殺して、どうにか「付き合ってくれてありがとう」と絞り出した。巻き込んでごめんは、口を開いてもうまく紡げなかった。  小山内のおかげで、あたしは無事に失恋できた。ひとりだったら、とても今日ついていこうと思わなかった。あっちが告白することも知らずに、気づいたら忍から付き合った報告をされて、静かに失恋してただろう。  ちゃんと、終わらせられた。すっきりしないし、今も好きだし、明日からどんな顔すればいいかわかんないけど。好きになれてよかったのは間違いない。改めて思えるのは、たぶん、隣に仲間がいるからだ。 「そんなすぐすっきりできる好きなら、ここにいないよ。俺ら」 「そっか。それもそうだね」 「じゃ、帰るか。ただでさえ告白盗み聞いて最悪だし、これ以上の最悪なやつになりたくない」 「言えてる」 「つか、お前俺の服で涙拭いてんじゃねぇよ。ハンカチ使え、ほら」  リュックからすぐにハンカチを出してくれて、あたしは遠慮なくそれを目に押し当てる。
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