サクサクでしっとり

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「ティッシュは?」と訊ねたのと同時に、わかっていたとばかりにティッシュもくれた。鼻をかんで、息を吐いて。あたしが落ち着くまでの間、小山内は早く帰ろうと急かすようなことはしなかった。 「小山内はしんどくない?」 「何か、しんどいと思ってけど隣にすげぇ泣いてるやついるの見たら満足した」 「泣きたかったら泣いてもいいよ。ハンカチ、あたしもあるよ」 「もともと諦めてたし、ついにこんな日が来たかーってくらいだから平気。梨本がいてくれてよかった。気持ちがそこまで落ちないでいられる」 「泣かせるつもりなら間に合ってます」 「ばーか。本心だろ」  眉を下げて笑う小山内は言葉通りには見えなかったけど、それは言わないことにした。今そう言ってくれるなら、あたしも同じ言葉を返そう。 「あたしだって、小山内がいてくれてよかった。ありがと」 「おー、どういたしまして」  最後にしあわせそうに微笑み合う2人を見てから、あたしたちはその場を離れることにした。――さて。 「ラーメンかケーキか、焼肉かたこ焼きどれにする?」  スマホのインカメで自分の顔を確認して、目は赤かったけど。それはそれ、これはこれだ。ここで帰ったら、あたしは沈んで明日までに回復できる自信がない。  小山内も、今のまま帰したらたぶんひとりになったときにダメージが来るだろう。少しでもダメージを減らすために、一緒にいてもらうことにする。 「何でその選択肢?」 「失恋したらやけ食いって相場は決まってんでしょ」 「選択肢がおかしいだろ」 「あたしが食べたいものなの。文句あるなら食べたいもの言ってみてよ。どうせないでしょ。知ってる」  あたしは駅へ向かう道の遠回りの道を選んで、角を曲がった。小山内もわかっていてか、何も言わずついてきてくれた。  万が一にも後ろからさっきの2人が来たら困る。こっちなら大丈夫なはずだ。
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