壱 恋する乙女

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え、と目を見開いた。 私が来年の月兎の舞の雌兎役に内定してる……? 月兎の舞と言えば観月祭の目玉、満月の下赤い太鼓橋の上で舞われる特別な演目だ。18歳以下の若者が演じる演目なので、毎年神修の中で一番舞の上手い学生が男女一人ずつ選ばれる。ここ数年はずっと聖仁さんと瑞祥さんが選ばれていた。 そんな二人も来年から専科に進むので別の人が選ばれるのは当たり前なのだけれど、まさかそれが私だなんて。 「納得の人選だよな、聖仁!」 「そうだね。巫寿ちゃんなら安心して任せられる」 うんうん頷く先輩二人に頬が熱くなる。二人がそう評価してくれていることが純粋に嬉しかった。 天叡さんが「僕はどうなんだよー」と少しおどける。二人はにししと笑って肩に手をかけ飛び付いた。 「稽古は明日から始まるから、詳しい日程は二人に聞いてちょうだいね」 期待してるわね、と私と先輩の方を叩いた富宇先生は片目をつむって私たちに笑いかけると稽古場へ入っていった。 「稽古の日程、本庁の掲示板に貼ってあるから今から見に行くこうぜ!」 瑞祥さんが私の頭をガシガシと撫でながらそう身を乗り出す。
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