序 予感

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「べ、別にこんぐらい一人で運べるし! て、てか最近まで大怪我してた奴頼れるか!」 見ているこちらが心配になるほど挙動不審な態度で目を泳がせた瑞祥さんは、扇風機を抱えると逃げるように部員たちの間をすり抜けて行った。 「おかしい」 「実におかしいです」 私にもたれかかっていた二人が、目を細めてそう言った。 「そ、そんな事ないと思うけどなぁ。それよりも今日のお昼なんだろうね」 瑞祥さんがおかしな態度を取る理由は大体検討がついている。けれど変に介入せず暖かい目で見守ろうと心に決めているので、話題を変えようとしてみたけれど効果はなかった。 「巫寿ちゃんの目は節穴なの!? 明らかに変じゃん瑞祥さんの態度!」 「あんなにいつもずっと一緒にいたのに、最近一言二言話すだけですぐにどこか行っちゃうじゃないですか!」 まぁ分かりやすい態度だよね、と苦笑いを浮かべた。 「喧嘩? だったら口はきかないかぁ」 「瑞祥さんが一方的に怒ってる、とか?」 推理を始めた二人の呟きに正解が含まれていないことにホッとする。 神修の学生は噂好きなので、誰かが答えにたどり着けばそれは一瞬で広まってしまう。そうなれば見守るどころの話じゃなくなるだろう。
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