序 予感

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部活が終わってお風呂から上がると、脱衣所のカゴに適当に放り込んでいたスマホに何件かメッセージが届いていた。そのほとんどがお兄ちゃんで「何してる?」「ご飯食べた?」「今忙しい?」と言った内容だ。読むだけ読んで放置する。 あとはクラスメイトの皆からと親友の恵里(えり)ちゃんから他愛もない話題。 私の保護者代わりである禄輪(ろくりん)さんからもメッセージが届いていた。一学期の終わり頃に頼んでいた件の返事だった。 「あ、良かった」 「何がー?」 隣で髪を拭いていた盛福ちゃんが振り向く。 「夏休みの課題に、"夏祭りの運営を手伝う"って課題が出てるの。私の実家はお社じゃないから、ほだかの社で手伝えないか聞いてたらオッケーだって」 ほだかの社は禄輪さんが管轄する社だ。 私と同じように実家がお社じゃない学生向けに、神修を管轄しているまねきの社が夏祭り運営のボランティアを受け入れていると聞いたけれど、先輩が青い顔をして「絶対に他の社でやった方がいい」と言っていたので禄輪さんにお願いした。 なんでもしばらくの間夢でもうなされるほどこき使われるらしい。流石にうなされたくはない。 【何ならバイト代も出すから、合宿が終わったらすぐにでも手伝ってほしい】とも書かれている。 禄輪さんのお社は十数年前に訳あって潰れてしまい、ようやく再建に向けて動きだしたところだ。 当時務めていた神職たちは定年したり結婚したりで戻ってくることは難しく、年末年始もかなり人手不足で嘆いていた。 断る理由もないので二つ返事で引き受ける。
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