序 予感

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「カンパーイ!」 例のごとく未成年の集まりなので、乾杯のお供は甘酒だ。 本日の開催地は玉珠ちゃんの私室、本棚に並ぶなかなか過激な背表紙がチラチラと視界に入ってきて非常に落ち着かない。男の人たちが半裸で絡み合っている。 玉珠ちゃんの趣味はボーイズラブの漫画を読むことだ。ちなみに三次元も可なんだとか。 「ねぇ玉珠、この前借りた『僕に堕ちてよ安吾先輩〜無限快楽地獄の果てで〜』の三巻ってあるー?」 「あるある。今出すね」 借りてるんだ。というかもう二巻まで読んでるんだ。 明らかなに18歳以下の購入は認められていなさそうなタイトルなのにはあえて突っ込まない。 巫寿さんもボクオチ読みますか?と聞かれたので丁寧にお断りした。 「で、本題だよ本題! 瑞祥さん!」 夕飯に出たフルーツの残りを呑気に咀嚼していた瑞祥さんがゴボッとむせた。 胸をトントン叩きながら水を一気飲みする。口元の水滴を拭いながら目を逸らした。 「な、何だよ」 「最近の瑞祥さんなんか変! 何で!?」 「何かあったんですか? 聖仁さんと」 聖仁さんという単語にもう一度むせた。 怪し〜い、と二人の声が揃う。 瑞祥さんが私に助けを求めるように振り返った。 可哀想だとは思うけれど、ぶっちゃけ私も気になっていたところなので三人のやり取りを見守ることに決める。 苦笑いで肩を竦めれば「巫寿ぉ……」と恨めしそうに睨まれた。
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