21 閑話② ~三日目(16話と17話の間)

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21 閑話② ~三日目(16話と17話の間)

「よし、確認するぞ!」  ジーパンのポケットからスマホを取り出す。  電源を入れると早速「箱庭のロンド」の画面が立ち上がった。 「充電しなくてもバッテリーが一ミクロンも減ってないミステリー……」  画面右上のバッテリー表示は「88%」。恐らくこの世界に来る寸前の、あちらの世界の残量そのままだろう。  にゅっと新マリサが頭に浮かび、「考えるな、感じるんだ!」と訳の分からない事を言って消えた。 (おいおい……)  突っ込んでいる場合ではなかった。  本日収穫した際に発生しているであろうポイントの確認と、ポイントで交換できるものの吟味を今の内にしたかった。 「おおっ、収穫ポイント、650ポイントも入ってた! えっ、でも、こんなにもらえたっけ?」  ゲームのマリーサの時は、最初の収穫ポイントは500ポイント台だった記憶がある。うむむ~と考えるが思い当たらないため、一旦保留にする。  一度収穫した野菜の種と苗は倍に増える。今日植えられなかったのは残念だったが、帰ったら早速植えなければと頭を巡らせるマリサだった。 「そうだ、呪文で時間短縮できるなら、早朝から植えたら、一日に二回植えられるかも」  ポイントで交換できるアイテムをスクロールしていく。 「『簡易トイレ』は1500ポイントで交換できるんだ。あっ、『コンポスト・トイレ』がある。これ、畑の堆肥が作れるやつだ。2000ポイントね」  どんどんスクロールして行き、ピタッと指が止まった。 「わあっ、『ログハウス風の家』は、10000ポイントで交換できるのね!」  ゲームでは、家は二の次で欲しいものリストの上位になく、作業小屋を選択していた。   幾つかある家の中では必要ポイントも低めで建物のサイズも小さめだが、ログハウス風の家はなかなか頑丈そうに見える。 「シロリンがいても、やっぱりテントでは心許ないもんね」  なにより、雨風を凌げるのが魅力だ。しかし、トイレだって今すぐにでも欲しい。  今のトイレは、シロリンに穴を深めに掘ってもらって、身を隠すため穴の中に足場を作った仕様になっている。ただし、明るい内はまだいいが、夜はまったく足場も底も見えなくなり、そのまま落ちそうで恐怖しかないのだった。 「ううーん、トイレと家、どっちを先にしよう。……まって、ログハウス風の家は一間で、二十㎡ほど。室内は何もついてないんだっけ。でも、小さくても家が10000ポイントは破格な気がするし、なにもないのは仕方ないか」  その他はオプションになるが、調理の出来る薪ストーブ、魔石で浄化する水道付きの流し台、同じく魔石で動くオーブン、風呂、トイレ等が設置できる。 「テーブルとか家具も、それぞれ種類があるんだよね。まあ、いいなと思うものはポイントが大きいけど……」  マイホームで、シロリンとまったり過ごす場面を妄想し、やはり家が欲しいと思うマリサだった。  コンポスト・トイレは魅力的だが、堆肥はポイントで交換できるし、ロバジイからも買えるはずだ。  トイレは独立して外に作るより、オプションで、家の中や家に繋げる形にしたい。 「よし、『ログハウス風の家』に決定!」  早速、設定する。 「家は設定でいいけど、後はその都度選ぶ形にしようかな」  最初に目標設定をしておけば、そのポイントに達成するまで他のものとポイント交換が出来なくなる。うっかり無駄なものと交換しなくて済むのだ。    そういえばとアイテムボックスを開く。  そこから、マリサは自分の畑で収穫したカミナリコムギを一つ取り出して手を翳す。 「オープン」  すると、 『S(品質)・カミナリコムギ イネ科・成熟期 サイズ・二割り増し 光魔法(成長促進)により十時間で成長・収穫済み』 と表示された。  公爵家の畑で蒔いたカミナリコムギのステータスは、 『-S(品質)・カミナリコムギ イネ科・幼苗 サイズ・一割り増し 光魔法(成長促進)により十二時間で収穫可能』 という表示だった。 「私のレベル、「5」ってなってる、うん低いね。で、二つのカミナリコムギの品質の違いに、私のレベルは関係なさそう。うちの畑で収穫したものの方が、成育がいいもの。ジャングルみたいになってたけど、野菜はどれも熟れすぎたってこともなかったし。それと、成長の時間も二割ほど早いみたい」  戻ったら、次は寝落ちしないで野菜を育てて確認する外なさそうだ。  一日で二毛作(?)それが出来たとして、ちゃんと育つかは不明だ。 「あっ、もしかして、収穫ポイントが多かったのは、サイズが二割大きかったから? 品質の違いもあるかな?」  頭で計算すると、650ポイントから二割引けば、520ポイントになる。 「そっか、そういうことなのかも」  マリサはひとり頷いた。 「収穫すれば、種も苗も倍に増えるし、うまくいけば、案外早くマイホームが手に入るかも。んーっ、早く帰って植えたいーっ」  明日から南の地へ向かうというのに、頭の中は、畑のことでいっぱいだ。目標を立てると、気持ちに張りが生まれるらしい。俄然やる気に燃えるマリサだった。
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