エピソード2

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(―――はっ!!) “会いたい人”と言われた、そのワードに反応する。 それって……あの時山梨さんと一緒にいた、恋のライバルのお姉さんのことだ。 山梨さんの口からあのお姉さんのことを聞くと、胸がぎゅうっとする。 でも……アヤさんは私が乗り越えなきゃいけない相手―――ライバルなんだ。 「……その人って、」 「ん?」 「アヤさん、って方ですか?」 「お、サキちゃんはアヤちゃんのこと知ってるん? 今日入ったばっかりなんちゃうかったっけ」 「はいっ! でもさっき山梨さん、入口で言われてたじゃないですか。『アヤちゃんおらん?』って」 「あー、聞こえてたんや」 山梨さんは笑って小さく頷き、またふうっとタバコの煙を吐いた。 「そうやねん、なかなか会えんでなぁ。いつ出勤か、だいたいわかっとるんやけど」 そう言った山梨さんが、すこし寂しそうな笑顔だから、胸がまたぎゅうっと締めつけられる。 前に見た状況から、アヤさんはほかのイケメンさんも手玉に取っている感じだった。 山梨さんもそのことをわかってる感じだったのに、それでもなお、こうしてわざわざ会いにきてるんだもん。 (あ、アヤさん) なんて羨ましいっ。 どれだけ羨ましい立場なんですかっ!!
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