エピソード2

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「連絡先なぁ。……うーん、そうやなぁー」 山梨さんは困った顔で笑っている。 やんわり断られたみたいでショックだけど、ここで気弱になっちゃだめっ。 ここで引きさがったら、次会えるかもわからないもん! 「わ、私、このお店に入ったばかりで、山梨さんは私の初めてのお客さんなんでっ! どうしても連絡先知りたいんです」 マンガ『お水の花道』だって、ホステスがお客さんから名刺もらってたし、きっとこういう時の正解はこれなはずっ。 私の訴えに、山梨さんは「んー」と、すこし弱った表情のまま笑う。 「サキちゃんは営業熱心やなぁ」 「はいっ」 「ええことや! でも、ごめんな。俺まだサキちゃんのことよく知らんし、もうすこし仲良なったらかなぁ」 (そ、そんなぁぁぁ!) 笑って目を細める山梨さんを見ながら、今度こそじわっと涙が出てきそうになる。 仲良くなったら? 仲良くなるために連絡先がほしいんですよ、山梨さん―――!! 隠せないくらい「がーん」って顔をしていたらしく、山梨さんが「そんな顔せんといて」と慌てたように言う。 笑いたい、けど、断られたショックが大きくて笑えない……。
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