37人が本棚に入れています
本棚に追加
「連絡先なぁ。……うーん、そうやなぁー」
山梨さんは困った顔で笑っている。
やんわり断られたみたいでショックだけど、ここで気弱になっちゃだめっ。
ここで引きさがったら、次会えるかもわからないもん!
「わ、私、このお店に入ったばかりで、山梨さんは私の初めてのお客さんなんでっ! どうしても連絡先知りたいんです」
マンガ『お水の花道』だって、ホステスがお客さんから名刺もらってたし、きっとこういう時の正解はこれなはずっ。
私の訴えに、山梨さんは「んー」と、すこし弱った表情のまま笑う。
「サキちゃんは営業熱心やなぁ」
「はいっ」
「ええことや! でも、ごめんな。俺まだサキちゃんのことよく知らんし、もうすこし仲良なったらかなぁ」
(そ、そんなぁぁぁ!)
笑って目を細める山梨さんを見ながら、今度こそじわっと涙が出てきそうになる。
仲良くなったら?
仲良くなるために連絡先がほしいんですよ、山梨さん―――!!
隠せないくらい「がーん」って顔をしていたらしく、山梨さんが「そんな顔せんといて」と慌てたように言う。
笑いたい、けど、断られたショックが大きくて笑えない……。
最初のコメントを投稿しよう!