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今年の夏は暑すぎて、ずっと食欲がなかった。かといって痩せたわけではない。アイスやジュースばかり飲んでいたせいか体重は減らない。動かないからカロリーは全て身に付いた。でも何か足りないのか目眩はするし貧血気味。
「それで階段から落ちて捻挫しちゃったっていうわけなの」
同僚の八重子がお見舞いにきてくれた。
「望美の部屋は2階だから大変ね」
私はアパートの2階に住んでいる。普段は何とも思わないが、足を怪我したとなると仕事どころか買い物にも行けない。
「病院はどうやって行ったの?」
「下の階のおばさんが救急車呼んでくれた」
「病院から帰ってきてどうやって階段のぼったの?」
「タクシーの運転手さんがおんぶしてくれた」
「あらら。そうとう力持ちな運転手さんだったのね」
ふと運転手さんの背中を思い出す。うん、確かに大きくてぷよぷよしててあったかかった。
「まあ元気そうで良かった。診断書出しといてあげるね」
「お願いします」
八重子に病院からもらってきた診断書を渡した。
「1週間休むようにいわれた。ごめんね、仕事大変になっちゃうね」
「お互い様よ。私が何かあった時はお願いね」
「任せといて。バリバリ働くから」
八重子が来てくれて助かった。診断書をどうやって職場に提出しようかと悩んでいた。郵送にしてもポストまでは徒歩5分。その前に階段を下りなきゃいけない。とても無理だ。かといってメールというわけにもいかない。デジタルの時代なのにこれだけはアナログだ。
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