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いつ、どこで、どうやって、彼女に惚れたのか。
まず、それを話しておきたい。
宵さんとの出会いは、俺が入社して営業部に配属された1日目。指導係となった彼女を前に、謎の心不全に悩まされ、簡単にいうと一目惚れした。
そして、仕事ができるとこにも更に惚れ、不健康で慢性的な睡眠不足の彼女の危なっかしくて目が離せないところも刺さった。
俺が守らねば、なんて烏滸がましく思ったり。
だが、一応は先輩後輩。上司と部下。
マイペースで掴み所のない彼女を落とすの至難の業だし、正直新米の営業マンは仕事だけで手一杯。
残業が続いたことで禁煙を諦め、人気のない喫煙所でぷかぷかと煙草を吸っていた時のことだった。
──奇しくも、神様は俺に味方した。
「あれ、京極くんも煙草吸うんだ」
喫煙者が疎まれるこのご時世、吸う人も限られてくる中で、宵さんがまさかの喫煙者仲間。
しかも、全然人が来ないビルの端の喫煙所にやってきたからガッツポーズしそうになった。狭いスペースで合法的に2人きりになれる。
「……浅桜さんも、吸うんすね」
「だってー、この仕事ストレス溜まるじゃん」
「わかります」
平静を装うも、心は歓喜していた。
宵さんのココアのような濃い茶色の髪が、夕日に溶かされて淡く透けている。オリーブ色の瞳も水晶のように煌めいていて、指先に挟んだ紙煙草と唇の隙間から揺らめく白い煙に俺は惑わされそうになった。
真っ白な肌に噛み付いて、跡を残したら、この人はどんな顔をするのだろう。
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