始まり

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目的の部屋の前まで来ると、久しぶりに会う相手だからか、やや緊張する。 一呼吸おいて襖に手をかけたら 『入れ』 静かに襖を開けると、そこには着物を着た男性が1人 正座をし左手には何かの木の枝、右手にはハサミ パチン、パチンと枝切りをした後、目の前に彩り豊かな花が生けられてある花瓶に挿していく。 『久しいな、翼。』 黒髪にオールバック 切長な目に筋の通った鼻、身長はあるのに小顔で、モデル顔負けの男 「うん。さっき誠さんに会ったよ。」 『まぁ、俺がいるってことはアイツもいるからな。……それより入ったんだろ?』 「早いね、もう知ってるんだ」 『俺を誰だと思ってんだよ』 「お父さん」 『おい』 「お兄ちゃん」 『及第点だな』   フッと笑う顔は誰が見ても見惚れてしまうだろう。 見慣れすぎてしまった私はやや感覚が麻痺している。 『本当にいいのか』 「よくないって言ったら?」 『んー、どうすっかなぁ。…まぁ普通の女子高生として青春を謳歌してほしいけどな』 「もう無理だよ、だって性別偽って入ってるから」 『はぁ、俺はお前を男に育てた覚えはねぇんだけど』 いつのまにか生花が終わったのか、立ち上がり私の目の前までくる。 所作一つ一つが綺麗なところがなんとも腹立たしいけど、男なのに美しいことは認めてあげる。
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