始まり

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「な、なんで清水くんがそのノートを……」 「机の上に置きっぱなしになってたから」 淡々と言う彼に内心頭を抱えた。 最悪! 昨日からないと思ったら忘れてたなんて! 絶対清水くんに見られた! 清水くんが小説ノートをペラペラとめくる映像が 浮かんでくる。 ヒィィィッ! どうしよう、恥ずかしすぎて死ねる。 クソザコ小説って言われる! 「面白かった」 無表情に言う清水くん。 「えっ」 その言葉に思わず清水くんを見る。 「文章はまだまだな部分もあるけど 設定とか、話の展開は面白かったよ。」 ふわりと清水くんが笑を見せ、 風が吹いたかのような錯覚を覚える。 ……清水くんの笑った顔、初めて見た……。 いつも、無表情で授業を受けてるのに 清水くんは物語が好きなのかな? わたしの小説も褒めてくれるなんて……。 「あ、ありがとう……」 「続き、書いてよ。俺が読者第一号になってやる」 「えっ? な、なんで?」 「さっき言っただろ?  永野の小説が面白かったからだよ」 清水くんはあたしの小説ノートを差し出して 口元に笑みを浮かべた。 この時から、あたしと清水くんの 交流は始まったのだ。
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