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別れと決意
「どういうことだよ」
男子が戸惑ったように声を上げた。
あたしも意味がわからなかった。
なんで、そんな、いきなり。
「突然のことで、挨拶もできなくて
申し訳ないと清水くんが言っていたわ。
お母様のお仕事の都合でね、
急に転勤が決まったみたいなの」
そんな。
あたし、まだ『フラワーマスター』の
第五章、清水くんに読んでもらってないよ。
清水くんと話したいこといっぱいあるのに。
教えて欲しいことだってあったのに。
なんで言ってくれなかったの、清水くん。
知ってたら、連絡先交換ぐらいできたのに。
もう、清水くんとの繋がりの糸は切れてしまった。
せめて連絡先くらいはと
先生に聞いてみたけど生徒の個人情報を
教えるわけにはいかないと断られてしまった。
帰宅後、自分の部屋でペラペラと
小説ノートをめくると
彼が面白いと言ってくれた主人公と友達の
やり取りにたどり着く。
もう会えないと思うと胸が締めつけられるような
気持ちになる。
あたしにとって、清水くんがここまで
特別な存在になっているなんて気づかなかった。
もう会えないけれど、きっとあたしは
清水くんに……恋をしていた。
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