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夢を叶えたあたしたち
あれから5年経ち、あたしは表彰台の上にいる。
ライトがあたしを照らして眩しい。
審査員席の真ん中に座っているのは今や
大人気作家となった滝本先生。
彼は驚いた表情で固まっている。
彼に会えた。
夢を叶えられた。
嬉しくて涙がとめどなく溢れる。
あの日からあたしは小説を書き続けてきた。
恥ずかしかったけど友達に自分の小説を
読んでもらってアドバイスをもらって
小説家デビューするために死にものぐるいで
頑張ってきた。
だから精一杯の告白を君に。
あたしはノートを滝本先生に見えるように
顔の前に持ってきた。
「あなたがあたしの運命を
変えてくれたんです。滝本先生」
笑顔を見せると彼は、表彰台に上がり近づいてくる。
清水くんだ。そう思うと緊張で心臓がドキドキした。
足を止めると清水くんはあたしの頭を優しく撫でた。
「……それは違う。
僕の運命を変えたのは……君だから。
つまり、このノートが運命の1冊だったのかもね」
彼の笑顔に釣られて笑う。
「永野、大賞受賞おめでとう」
あたしはこれからも小説を書き続けるだろう。
いつか、あたしの書いた1冊が
みんなの運命の1冊となるように。
いつかあなたに運命の出会いが訪れるように。
あたしはにっこり笑った。
(終わり)
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