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すると兄は「触るな」と俺の手を振り払い、冷たい目で見た。「おまえなんかと一緒に遊んだら、俺まで仲間外れにされる。おまえのせいで俺も、父さんも、母さんも、みんな苦しい思いをしてるんだ。……あっち行けよ、疫病神」
そうして彼は、何事もなかったかのように親戚の子供たちとふたたび遊び始めた。
親戚の子どもたちは兄とは遊ぶものの俺には見向きもしない。「朔夜のことは、この世に存在しない者と思え」と親や当主から、きつくい言い聞かされていたのだろう。
声を掛けても無視される。一緒に遊ぼうと思い、仲間に入ろうとすればみんな、別の場所へ移動していった。
幼い頃の兄は、同じ両親をもつ兄弟とは思えないほどに他人行儀だった。
俺が泣いて助けを求めても手を差し伸べてくれない。どこまでも合理主義な人だし、へたに俺と関わって、厄介事に巻き込まれるのがいやだったのだろう。
何よりあの人は、俺のバース性がアルファに変化するまで俺を〈弟〉として見ていなかったのだ。
当時、俺が住んでいた場所は北関東の市街地から遠く離れた、寂れた田舎町。人口の少ない辺鄙なところでは、アルファとめぼしい子どもの数が零に等しかった。
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