第1章 ある男の意見

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 その関係で兄も、母も、祖母もアルファであることを歳の近い子どもたちから、ずいぶんと珍しがられた。アルファを代々輩出する家だと羨望の眼差しを向けられ、もてはやされる。大したことをしていないのに尊敬され、祭り上げられるのは、いささか大げさに感じたものの悪い気はしなかった。  でも一部の人間からはひどく嫌悪され、これ見よがしに陰口や悪口を言われた。  ――あの子って、叢雲さんの家のご主人に似ていないわね。奥さんが浮気してできた子なの?  ――いやあねえ、違うわよ。だって朔夜くんは奥さんやご主人と似てないもの。  ――心の優しい人たちだから、誰かが橋の下か、ゴミ箱に捨てた赤ん坊を拾って自分の子として育てているのよ。  ――ああ、そういうこと。素性の知れない赤ん坊を自分の子どもと同然に育てるなんて、人徳のある人たちね。  ――だから朔夜くんはアルファじゃないのよ。将来ろくな大人にならないわ。そうに決まってる。  ――もしも、この町に犯罪者が出たりしたらなんて、考えるだけで、ぞっとするわ。何もなければいいけど。早くこの町から出ていってくれないかしら。  ――おまえ、生意気なんだよ。アルファが生まれる家だからってなあ、おまえも同じアルファだとは限らねえんだぞ!
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