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――そうだ、そうだ。こーちゃんは昔からこの町にいて、おまえなんかよりもずうっと偉いんだぞ。新参者が偉そうにすんな!
――姥捨て山で捨てられた捨て子のくせに、調子に乗ってんじゃねえ!
あの頃の俺は、周りの人間の言うことを気にして、いじけていた。
何が真実か、嘘かわからなくて意地の悪い人間たちの悪意ある言葉を、うのみにした。
自分は、実の両親から捨てられたみなしごのオメガだと思い込んで泣いていたんだ。
幼稚園のない休日は外にいることが多かった。
母は銀行員としての仕事に疲れ、休日は起きるのが遅かった。かといってアルバイトをひとり雇うのも、やっとな父の仕事を手伝わないわけにいかない。
父は自営業でラーメン屋を営んでいたから、休みの日は客が来るかどうかの勝負どころ。まかないで子供の料理を作ることはできても、遊びの相手をする暇はなかった。
何より、「勉強の邪魔になるから、おまえは外で遊んでろよ。幼稚園の友だちなんか連れてきて、ゲームなんか始めたら、承知しないからな」と兄から締め出しを食らっていたのだ。彼の言うことを聞かなかったせいで、これ以上嫌われたり、家の中に居場所がなくなってしまうのが怖かったんだ。だから俺はおとなしく、公園へ向かった。
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