7人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあちゃん、また燈夜くんに意地悪、言われたの?」
「絹香ったらー、そんなこと言っちゃ、さあちゃんがかわいそうよー。おままごとでもするー?」
「さあちゃん、助けてー! ぼく、絹香ちゃんの子供の役で、ずっと怒らればっかりなの!」
「朔夜、おままごとに飽きたら、おれらとサッカーしようぜ」
「そうそ、朔夜がいるとサッカー勝てるし!」
「絹香のおままごとは超スパルタだからな」
たしかに意地悪なやつもいただけど、優しいやつらもいた。だから町の子どもたちと遊ぶのは楽しかったんだ。
晴れの日は公園の遊具で遊び、友だちとごっこ遊びをしたり、公園の中を駆け回った。雨の日は誰かの家に行ってテレビゲームやカードゲーム。
遊ぶ予定のない日や喧嘩をしてしまったときは、町の図書館で手当たり次第に本を読み漁る。
だけど誰といても孤独感は、なくならなかった。
本を読んでいる最中は、現実のいやなことを何もかも忘れられた。でも本を読み終わえた瞬間や、図書館が閉館時間になると悲しい気持ちや、恐ろしい過去の記憶が波のように押し寄せてくる。
俺の中の何かが満たされなくて、腹を空かせた赤ん坊みたいに声を張り上げていたんだ。
*
時が過ぎ、幼稚園の年少から年中になった。
最初のコメントを投稿しよう!