第1章 ある男の意見

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 依然としてバース性はオメガのままで、ひどく落ち込んだ。  新しく子供たちがやってくる入園式の日も、いつものようにいじめられた。 「よかったな、オメガくん。てっきり別の幼稚園にでも行くかと思ったけど、今年もよろしく」 「そうそう! いーっぱい、いじめてやるから楽しみにしておけよ」 「オメガな朔夜ちゃんは、女の子とおんなじようにスカートを穿()いたほうがいいんじゃない?」 「うっせえな、てめえら! 俺だって、そのうち母ちゃんたちと同じアルファになるんだからな! 今に見てろよ……!」  悔しくて、胸が苦しくて、でも一方的にいじめられているだけの状態がいやで反論した。  すると口答えをするなといわんばかりに、人差し指で差される。 「嘘だ! 父様が言ってたぞ。おまえは叢雲の家の子じゃなくて、拾われた子だって。だから兄貴からも嫌われて、父親からも距離を置かれてるんだ」 「違う! 俺は、ちゃんと父ちゃんと母ちゃんの子だ!」 「おまえの言うことなんて誰が信じるもんか! 嘘じゃないって言うなら、なんでおまえだけオメガなんだよ?」 「おれらに文句があるなら今すぐアルファになってみろよ、嘘つき野郎」 「おまえ、本物のパパやママから捨てられたんだよ。だから兄ちゃんからも嫌われてるんだ! 今に今の父ちゃんと母ちゃんもおまえのことを捨てるよ!」  アハハハと楽しそうに俺を馬鹿にする連中に言い返せなくて、もどかしかった。
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