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ドアノブを回し、ドアを押し開ければ、そよ風がふわりと吹きこんで頬や髪を優しく撫でた。みずみずしい新緑や温かな土の香りが、初夏の訪れを告げる。
新鮮な空気を吸いこんで、胸を大きく反らしながら深呼吸をする。
そうして朔夜は屋上から見える風景を何をするでもなく、ぼうっと眺めていた。
まるで白鳥のように手を広げて白い飛行機が空を飛ぶ。通った空路の軌跡を描くように白い飛行機雲ができる。しかし、その雲は細くたなびいたりはせず、あっという間に消えていってしまった。
「……明日も晴れか」
朔夜は右手に持っていた手紙を持ち上げ、目線をやる。
慎重な手つきで封を切り、中から一枚の手紙を取り出した。
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